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人間はかつて完全な存在だったが傲慢でもあった。それに怒った神が人間を二つに切断してしまい、それ以来人間は失われたもう一方を求めて探し歩く存在になってしまった。この「失われた半身」への欲求をプラトンは「エロス(愛)」と呼び人間の行動原理として位置づけた。そんなことを高校生の頃に教わった覚えがある。
「Hedwig & The Angryinch(ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ)」という映画を観た。東ドイツを逃げ出して子どもの頃から憧れていたロックの国アメリカに行くために性転換手術で性別を変え米軍兵士と結婚するトランスジェンダーのヘドウィグ。しかしその手術は失敗、「Angryinch(怒りの1インチ)」が身体に残ってしまい男でも女でもなくなった身体で「失われた半身」を求め続ける物語。 2001年に公開された映画なので既に観られた方も多いかもしれないが、とんでもなく面白くそして感動的。こんないい映画を見逃していたなんて。(ちなみにHedwig=ヘッド・ウィグ、女装用のカツラがこの映画では重要なモチーフになっている。また配役に”仕掛け”が潜んでおり、これに気が付くのと気が付かないのではこの映画に対する見方がかなり変わるような気がする。) 劇中で歌われる曲がどれも素晴らしい。ヘドウィグ役兼監督のジョン・キャメロン・ミッチェルはシンガーソングライターとしても超一流だと思う。(素顔の彼は映画からは想像出来ない静かなたたずまいの人。彼自身性的マイノリティでもある。) どの曲もいいのだけど特にラストでヘドウィグが高らかに歌い上げる「Midnight Radio」を聴いてわたしは不覚にも涙がこぼれてしまった。 All the misfits, and the losers, Well you know you're rock and rollers. Spinning to your rock and roll. Lift up your hands. Lift up your hands. 彼女はありのままの自分を愛してくれる存在を探し続けるのだけど、いつも裏切られ傷つく。わたしたちと同じように。映画ではヘドウィグが思いもよらぬところでついに「失われた半身」を見つけるのだけど、わたしは死ぬまでにそうなれるだろうか。 全てのmisfitsやlosersに観て欲しい、そして観たあとはきっと誰かを抱きしめたくなるような映画。
by sivaprod
| 2007-06-18 04:24
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